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闇に入る 『二十歳の原点』
高校の後輩が急逝した。
山岳部では入れ違いになる学年に当たる。
高校時代で本格的な登山を辞める人が多い中、彼は大学の山岳部に入って冬山も登り続けた猛者だった。自分も中途半端に登山を辞めてしまった感があり、大学まで登り続けた連中には頭が上がらない。(大学時代単独で北海道の利尻山に挑んだがゼロメートルからのあまりに長いアプローチで脚を傷めて挫折してしまった。)

後輩の彼は地元に帰り写真屋を営みながらOB会や色々な組織の世話役をしていた。何が死因になったかはわからない。
彼の事情も良く知らない。共通項は同じ高校で山好きだったということだけだ。言葉を遺さず逝ったので不明なままである。

今年の正月もOB会で会って分かれ際に彼の肩をポンと叩いて「こないだの写真ありがとう。」と言ってそれが最後になった。

自分より若い世代が逝くのは生理的に痛々しい。不条理であり心の悲しみよりも心の痛みを感じる。不自然に思える。

山好きが昂じて写真屋の傍ら、登山用品の販売を扱ったりもしていた。自分のMILLETのザックはしばらく使っていない。
自宅にあった登山靴も朽ちてしまった。1年のうち1月は山で生活していた人間がいまやすっかり都市生活者になってしまった。彼の死から登山用具を思い出し、高野悦子の『二十歳の原点』を思い出した。ワンゲルをやっていた彼女の詩からは峻厳な山岳地よりも湖沼のある高原を思い浮かべる。

旅に出よう
テントとシュラフの入ったザックを背負い
ポケットには一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう

出発の日は雨がよい
霧のようにやわらかい春の雨の日がよい
萌え出でた若芽がしっとりとぬれながら

そして富士の山にあるという
原始林の中にゆこう
ゆっくりとあせることなく

大きな杉の古木にきたら
一層暗いその根本に腰をおろして休もう
そして独占の機械工場で作られた
一箱の煙草を取り出して
暗い古樹の下で一本の煙草を喫おう

近代社会の臭いのするその煙を
古木よおまえは何と感じるか

原始林の中にあるという湖をさがそう
そしてその岸辺にたたずんで
一本の煙草を喫おう
煙をすべて吐き出して
ザックのかたわらで静かに休もう

原始林を暗やみが包みこむ頃になったら
湖に小舟をうかべよう

衣類を脱ぎすて
すべらかな肌をやみにつつみ
左手に笛をもって
湖の水面を暗やみの中に漂いながら
笛をふこう

小舟の幽かなるうつろいのさざめきの中
中天より涼風を肌に流させながら
静かに眠ろう

そしてただ笛を深い湖底に沈ませよう

http://www5.plala.or.jp/ginnga2000/sihenotabi-takanoetuko.htm より引用



彼女の詩からも死特有の透明感を感じる。死者は語らずというが、永遠に闇に入ったような感を生き残った人々に遺すような気がする。死んだら人間と人間の超えられる壁も永遠に越えられないまま遺されるような気がする。

死者と対話することは出来ない。永遠に対話は一方的に拒絶されてしまう。それが悲しい。
既に同級生のうち4人は自ら命を絶った。その他でも同世代、後輩が命を絶っている。理由はさまざまだが真相は永遠に闇の中だ。闇に入ってしまった。

若き死から学ぶことは生きることの意味である。生に憧れは無いが、私は生命の火が灯る限り生きていきたい。それがなんとなく自分の務めだと思える。生を全うしたい。それまではどんなことがあっても生きよう。そうすればどこかで他者とつながっていられるような気がする。 合掌。
|  6条麦茶 | - | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
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Comment
2006/04/11 5:22 AM posted by: お〜いお茶
きは様

TBありがとうございました。私はちょうど二十歳の頃読みました。二十歳の気分が良く分かります。
高野悦子さんはあまりに繊細で研ぎ澄まされた感性の持ち主ゆえに夭逝されたような気がします。
私は彼女の倍近い年齢のいい歳ですが同世代で自殺する人が多いのが悲しいです。知人の訃報を知ってつい山好きの彼女の最期の詩を思い出しました。

高校3年生とのこと、二度とない時間を大切にお過ごし下さい。
2006/04/08 10:19 AM posted by: きは
初めまして。
私は今高校三年生なのですが16歳の時に始めて読みました。
似たような年頃なので共感できる点が多々ありました。
また、思想的にも結構に通っていて洗練された日記を書いた彼女を尊敬しています。
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