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渋谷で『意志の勝利』を見る
                    意志の勝利
 
 雨の水曜日、9月の終わりにシアターN渋谷で上映中の「意志の勝利(Triumph des Willens)」を見に行った。水曜日は1000円だった。

 レニ・リーフェンシュタール1935年作品、国民社会主義ドイツ労働者党(NSDAP)全国党大会映画担当局製作。
当作品はあまりに有名なナチス宣伝用映画であり、戦前プロパガンダ映画の傑作。客入りはかなりの盛況、延長して上映されている。「頭脳警察」の記録映画が予告編であった。パティ・スミスの映画が上映後にあった。
 


 全編モノクロームだが、光と影を効果的に使っている。特に夜間の松明行列や党大会映像は夜と炎のコントラストが見事に映し出されている。エイゼンシュタイン「戦艦ポチョムキン」の影響を随所に感じる。プロパガンダ映画はボルシェヴィズムからの輸入品でありそれを完成させたのがナチズムだったのだろうか、モンタージュ技法が相当に取り入れられている。空からの雲の切れ間の光景。ニュールンベルクの街並み。実にゆったりとした映像から映画は始まる。ヒトラーユーゲントの健康的肉体美。ヒトラーを見つめる女性の恍惚とした羨望の眼差しが印象に残る。この眼差しは監督であるレニ女史本人の視線に重なるものではなかったか。余談だがパンフレットで見たレニ・リーフェンシュタールのフォト、元女優の彼女は相当な美貌。総統に対する女性の眼差しや嬌声が印象に残るがそれは女性監督による映画からなのかもしれない。
パレード行進するヒトラーへのジーク・ハイル!、ジーク・ハイル!の歓声は現代のいかなる祭典、いかなる政治ムーブメントによっても実現不可能なほどの圧倒的エネルギーがある。まさしくヒトラーは国民が合法的な手続きを通して選んだ英雄であったのだ。
 
 圧巻はラストシーンの党大会のヒトラーの演説である。観衆の歓声を一度鎮めて一呼吸置いてから演説を始める。アクセルの強弱がうまく彼の弁論術は天才的である。ヒトラーのドイツ語は音声の良い映画館で改めて聴くとかなり聴き取りやすいことがわかった。それが今日の収穫か。その他、ゲッベルスやヘスなど党首脳の演説も巧みでかなり聴き取りやすかった。
 
 しかし残念ながら彼らの演説にはほとんど内容がなかった。演説が山場であり雄弁ではあるが演説の内容、つまり思想的内容が空疎過ぎる。映像は素晴らしいが肝心の政治観の中身がない。率直な感想は、残念ながら糞つまらない映画であった。寝不足のせいか数分寝てしまった。後方でしばしば舌打ちが聞こえた。映画というよりも映像&演説という作品と見るべきかもしれない。言葉の重さと深さが映画でいかに大事な要素であるかも逆に感じた。しかし反面教師としてみておくべき作品かと思う。
 
 1934年撮影だがこの時期はやがて粛清される突撃隊もこの時期はまだ堂々とのさばっている。後に抹殺的反ユダヤ主義がナチズムの中核思想に加わるが、この時期はそのような毒素がまだ計画化されず、映画では非合理主義や暴力が当然ながら隠蔽されている。やそれらはナチスの本質でもあった。非合理主義のないナチスは本当に空疎な政治観しか持ち合わせていない。あまりに多元的で多層的なドイツという世界を一つにまとめるためにはこのような極めてナイーブで粗野な原理が有効だったのではないだろうか。啓蒙主義やロマン主義、歴史主義、保守革命等のドイツの豊穣なる、そしてあまりに複雑で抽象的な思想的遺産があったにも関わらず、結果的にこのようなアホな政党が勝利するとは何たる喜劇、そして何という悲劇!
 
 プロパガンダ映画ではあるが、大衆の圧倒的な歓声と恍惚とした眼差し、これらの「現実」を単純に悲劇と片付けてはいけないことを痛感させられる。やはりドイツ国民は少なくとも一時的には、「確信犯的に」ナチスを支持していた。この映画はドイツ国民が共犯であったことを映し出している。ドイツ国民の罪の重さを描写していることが最大の功績であるかもしれない。
 ナチスは歴史家マイネッケが述べるような不幸なドイツ史の悲劇ではなく、民主主義の後にドイツ人が主体的に選んだ道であった。選択を誤ればこうなる。総統の英雄像を描いた映画ではなく、支持する側の多数者の専制のエネルギーと怖さ、その両義性を正直に描写した映画とも言えよう。
|  6条麦茶 | - | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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